本当のグローバル企業
個人ユーザー向けのウイルスバスターで世界に名を成し、インテルとの戦略的提携によるロイヤリティ収入で活路を見出したが、日本での店頭市場・株式公開までには幾多の苦難に遭遇。 ハッカー型ウイルス「コードレッド」等の出現による悪戦苦闘、ネットワークセキュリティー戦略のトレンドセッターへのと方向転換、ITバブル崩壊による経営悪化、コア・コンピタンスの確立、グローバル企業イメージの確立と世界的マーケティング戦略の追求――等々、本来なら台湾のクローニー企業であったはずの会社が、真のグローバル企業に脱皮してゆく様子を克明に描いたのがこの本である。 闘うべき相手が国境を越えた悪・ウイルスであるから、業態からしても最初から「国境を越えたトランスナショナル企業」であるのは当然で、ベンチャー企業として限られた資源の有効活用を追及しているうちに「真に国際的なグローバル企業」になったと言う。 各章の末に、真のイノヴェーター・スティーブ・チャン会長の、リーダーシップと戦略構築・遂行に傑出した実に含蓄ある経営論が展開されており、トレンドマイクロの成功の秘訣が開陳されている。 面白いのは、経営には全く素人でMBA教育を受けていないことに気後れした創業者トップ達が、自社をケース・スタディのモデルにしたハーヴァードBSに高邁な経営理論を期待してアプローチするクダリ。結局、ケースは、実際の生きた経営を後追いして現実と理論を俎上に新経営理論を構築して学ぶ手法であることに気付く。
|